企業再生局面での
銀行の『債権放棄』
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銀行の債権放棄の制度
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■ 債権放棄とは?

1.銀行側の支援準備
 この手法は銀行側の支援準備として、債務者企業に対する融資貸出金の100%引当(貸倒引当金)が必須です。そのために、その債務者企業の金融庁基準の信用格付「債務者区分」は、実質破綻先(融資現場では所謂「ジッパ先」と呼んでいる)以下で無ければなりません。銀行融資債務者は銀行側のこの痛みを良く理解することが信頼上、極めて重要です。

 その貸倒引当金(負債項目)を積むとはどういうことか?
  イ)それは複式簿記で、(借方)貸倒引当損 (貸方)貸倒引当金 の仕分けをすることです。
     ・つまり、会計上の費用である貸倒引当損を計上することです。
     ・費用が増えれば、銀行にとって「節税」になり良いではないか? 
      それは2つの点で誤解です。
       ①貸倒引当損は、会計上の費用でも、税務上は費用(損金)ではないので節税になりません(有税)。
       ②貸倒引当損は、決算上は費用だから、利益が減る(「銀行業績の悪化」に繋がる)。
  ロ)銀行の貸出先信用格付「債務者区分」を実質破綻先以下に落す評価をすることです。
     ・融資稟議書において「なぜ、救済支援の努力」が実らなかったかの経緯説明が必要です。
     ・銀行融資担当者の「支援実績」の証明が要る
       ①「底堅い事業計画」の策定と実施
       ②その「底堅い事業計画」の定期的(月次)のモニタリング(目標達成管理)の実施
       ③その「底堅い事業計画」の達成率が概ねの「80%基準」を満たさなかった結果
       ④リレバン(貸出先との親密なコミュニケーション)の記録
       ⑤事業計画書の「紙くず化」の究明による社長責任の認識確認と、認定支援機関の責任追及
       ⑥その不良貸出先への「法的破綻処理」の告知と稟議報告

2.債務者企業側の「行く末」
 企業に対する再生手法として一般的な金融支援の内容は、直接の債権放棄です。法的整理手続において策定される再生計画(更生計画)は、殆どが直接の債権放棄を内容としています。私的整理手続を利用する中小企業の多くはは、リスケ、DDS支援で、企業再生出来る財務状態ではありません。

 最近のリスケ企業の統計から見ても、第二会社方式による実質的債権放棄、又は債権放棄を必要とする事例が多いと考えられます。その場合、必要な債権放棄額は、実質債務超過額を睨みながら、所謂「成り行き」の経営計画書(B/S、P/L、及びC/F計算書)の第5年目の実質債務超過額から、算定することになります。

 私的整理で債権放棄を行う場合、債権放棄する銀行がその放棄金額について無税償却が可能か、また債務者企業に債権放棄による債務免除益課税が生じる計画となっていないかが、重要なチェックポイントです。
 まず、政府系金融機関、RCC以外の民間金融機関が、単独で直接債権放棄を実施した場合に、債権放棄額について無税処理することは難しいのが実態です。税務上無税処理が認められる要件に「合理的」という言葉がある。「合理的」とは一般的に、複数の銀行が債権放棄を実施することと解釈されています。もし単独支援による場合は、第二会社方式を用いて法的清算手続における債権の放棄を検討するか、ファンド等への債権売却を利用することになります。
 次に、直接債権放棄は、債務者企業の免除益課税の問題がありまする。つまり債務免除を受ければ債務免除益が生じ、その免除益に十分に見合う税務上の欠損金が必要です。税務上の繰越欠損金を超える債務免除を受ければ、銀行の債権放棄により、新たな納税資金が必要となります。実質債務超過も超過額が全て税務上の欠損金ではありません。中小企業では減価償却不足などといった不適切な決算処理が多く、債務免除益に見合う税務上の欠損金が不足している場合もあります。銀行の債権放棄で債務者に免除益課税回避は一つのリスクとなり得ます。そのため第二会社方式の方が安全とする考えには合理性があります。尤も、平成22 年10月より清算所得課税が廃止され、私的整理手続等によって直接債権放棄を受ける場合の欠損金の取扱いが変更され、一定条件の下では免除益課税問題の解決が図られています。

■ 銀行融資の債務者の課税関係

1.債務免除益への対応
 企業再生の局面で、銀行の支援を受ける銀行の融資債務者が、その銀行から債務免除を受けることになる場合、その債務免除によって発生する利益は、債務免除益として法人税等の課税対象となります。従って債務者側においては、債務免除益発生に伴う課税対策が一つの重要課題です。

2.青色欠損金の利用
 中小企業の青色欠損金は9年間繰り越して、その間の益金と相殺し、法人税課税がされません。債務免除益への対応は、法人税等申告書別表7の繰越欠損金額をチェックします。利益はその相殺分まで課税が発生せず、債務免除益の額を含めた全体の課税所得がこの範囲内で課税されません。なお粉飾や申告上の瑕疵については「修正申告」や「更生の請求」による調整後の計算になります。例えば、事業再生の局面にある業建設業の経営事項審査上、単純な粉飾がある場合は5年遡及の仮装経理の是正で国税当局への「更生の請求」が可能です。

3.期限切れ欠損金の利用

 法人税法は、会社更生手続や民事再生手続の開始決定があった場合、一定の私的整理があった場合には、所謂「期限切れ欠損金」の利用が認められます。なお一定の私的整理とは「債務の免除等が多数の債権者よって協議のうえ決められるなどその決定に窓意性がなく、且つ内容に合理性があると認められる資産の整理があった場合」を指します。なお期限切れ欠損金とは、青色欠損金のうち9年間という繰越期限が切れた欠損金ではなく、会社の前年以前から繰り越されてきた欠損金額から青色欠損金額を差し引いた金額です。具体的には法人税税法上の期首現在利益積立金額の合計額から、青色欠損金額を差し引いた金額です。期限切れ欠損金の利用は、法的整理と一定の私的整理において債務の免除があったに利用できます。期限切れ欠損金利用の対象は、債務免除益のほかに、会社の役員等から私財提供金額も利用可能です。「合理的な再建計画」の中で役員等からの私財提供は、期限切れ欠損金を利用することで私財提供受贈益に対しる課税回避が可能です。なお利用不可の例としては、親子会社間で親会社が子会社に対して有する債権を単に免除するような場合は、期限切れ欠損は利用できません。
 この場合の期限切れ欠損金の利用は規定では、まず青色欠損金を利用した後に、期限切れ欠損金を充てます。法人税等の負担は事業計画との調整が必要です。一般的には税引後利益を原資として債務超過額を解消します。そのため債務超過解消までの期間が長い場合は、再生計画の安定性を勘案しましょう。

4.資産売却による含み損の実現
 (1) 遊休資産の売却
 窮境の状況にある中小企業の場合、遊休資産売却で、窮境状態にある中小企業の過剰債務の解消に役立ちます。
 また、売却そのものが困難な資産、その売却に長期間かかる資産には、資金繰り表、債務免除を受ける時期との調整は注意点です。更に事業資産については、売却後に所謂「リースバック」も要検討の事項です。



5.企業再生関係税制の整備
 過剰債務でも、優良な経営資源を持つ企業は、有効に活用することを目的として事業再生への早期着手、且つ抜本的な処理を行うため、平成17年度の税制改正では、企業再生関係税制の整備がなされました。企業価値の毀損を最小限にとどめ確実な再生を目指すため、会社更生法の資産評価損の計上等について、民事再生法による事業再生や一定の私的整理においても認め、それらの利用を税制面からも後押しするものであった。具体的な内容は資産の評価損益の計上と期限切れ欠損金の優先控除です。資産評価損益の計上とは、資産の売却前の評価損の計上です。資産の売却による損失の実現のタイミングの問題や、事業上不可欠な資産の売却問題を解決する等の事業再生の迅速処理が目的です。
 期限切れ欠損金の優先控除とは、債務者企業に発生する債務免除益への対応として、期限切れ欠損金の利用を青色欠損金に優先して認めることで、青色欠損金を残し、再生計画期間中、初期に生じる課税所得を青色欠損金と相殺可能にして、法人税等の負担を抑え、早期の事業再生を目的とした規定です。

 a 資産の評価損益の計上
 事業再生では、民事再生法の再生計画の認可決定や、一定の私的整理などにおいて、債務者企業の資産に一定の評定を行い、発生した評価損益を計上することが可能です。一定の私的整理に基づきこの規定の適用を受ける場合、更に次の要件が必要です。
 ① 一般に公表された債務処理手続に従って計画が策定され、従事弁護士および公認会計士が3人以上の確認があること
 ③ 一定の資産評定に基づき貸借対照表が作成されていること
 ④ 貸借対照表上の資産・負債の価額、再生計画上の損益の見込等に基づき、債権者の債権放棄金額が算定されていること
 ⑤ 2以上の金融機関の債務免除の承認(但し政府系金融機関、RCC、企業再生支援機構の債権放棄は1行でも可能)
 
 なお、評価損益の計上に適さない資産として、資産の時価と帳簿価額との差額が1000万円(または資本金等の金額の2分の1に相当する金額といずれか少ない金額)に満たない資産などは、この規定は適用されないとされていた。こうした規定は、その後中小企業の利用においてより利便性を高めることを目的として税制改正が行われ、このうち平成20年度の税制改正では、要件⑤の金融機関に信用保証協会が追加され、平成21年度の税制改正では、有利子負債が10億円に満たない企業においては評価額との差額基準を1000万円から100万円(平成25年度税制改正では100万円の基準が撤廃される方向)に、また専門家関与基準を3人から2人にするなど、それぞれ要件が緩和されている。

 b 欠損金の控除順序
 債務者企業が債権者から債務免除等を受ける場合に、資産評価損益の計上は、その繰越欠損金のうち、青色欠損金を使う前に期限切れ欠損金から控除できます。効果としては企業再生計画が、青色欠損金が残った状態でスタートでき、計画初期段階での法人税負担が軽減されます。
 期限切れ欠損金の金額は、債務免除等を受けた金額と資産の評価損益の通算後の残金の合計額が限度です。評価損が残る場合には債務免除等を受けた金額から控除して、期限切れ欠損金の損金算入限度額を計算します。資産の評価損益を計上しない場合の期限切れ欠損金は、青色欠損金の利用後に、期限切れ欠損金を利用することになります。企業再生関係税制は、特に対象金融機関に信用保証協会が含まれたこと、専門家関与が2人に緩和されたことで、中小の企業再生計画の策定の利便性が良くなっています。
 
債務超過が続いてきた銀行融資先の債務者区分「実質破綻先」等について最終的に、銀行がその融資債権の「損切り」を行う場合があります。