◆始めに
  1.まえおき
   会社が窮境に陥れば「法的手続」として、民事再生はどうか?
  などと、議論する机上の論者は、そのコストの高さについて、知らない人が多いようです。
  結論的に、中堅以下の中小企業では、とても堪えきれません。
  だからどうするの?
  はい、私的再生になる訳です。

  なお次のような常識の持ち合わせも必要です。
  (1) 再生手続が認められる条件(次のいずれか)
    ➀ 支払不能(支払停止、支払不能)、債務超過の恐れの推定
    ➁ 事業継続に著しい支障なく、弁済期の債務弁済が不能なとき
 (2) 申立棄却事由
    ➀ 予納のない場合
    ➁ 裁判所で受け付けた破産手続、特別清算手続の方が、債権者の一般の利益に適合する場合
    ➂ メインバンクが反対する場合等、再生計画案の作成・可決・認可の見込がない場合

  
2.申し立ての下準備
    しかし、民事再生手続きを復習して、やはり私的再生でも、弁護士の参加が避けられないことを、しっかり認識して、
   素人まがいの「弁護士無し」の私的整理は、極めて法的リスクが高いことを、認識して戴ければと思います。
  ➀ 事前検討事項
     ⅰ)再生申立後も、事業継続できるか、つまり資金ショートなしに共益再建を支払って行けるか否かの検討
     ⅱ)予納金(裁判所に支払う監督委員報酬)は、数百万円~数千万円が掛る(事前チェックのこと)
  ➁ 運転資金の確保
    再生申立てを前提とした資金繰り表の作成が必要です。つまり、支払いサイトの短縮、手形使用が不可、
   少額債権(10万円以下)の支払い、留置権者等との和解費用、その他の費用を考慮した資金繰りを織込んで置かないと、
   途中で頓挫してしまいます。
  ➂ 事前確認
    i ) 取引銀行(メイン銀行の外、どの銀行を対象にするかを含め)への相談・報告のタイミングを決めておくこと
    ⅱ)自力再建か、スポンサーを募集するか、FAに委託するか否かの判断を決めておくこと
    ⅲ)裁判所への相談をして置くこと(東京地裁はファックスでのみ可能)
    ⅳ)初動対応
      再生手続申立てが関係者に知れると、弁済禁止の保全処分により当然に債権者に混乱が生じます。
      そのための対応
       a) 申立直後の債権者へのファックス連絡
       b) 申立翌日等での債権者への説明会開催
       c) 申立直後の、債権者・顧客等への個別訪問と個別対応(顧客は債権者ではないが、諸影響がでるものです)

  3.手続きの違い
   民事再生には、清算型と再建型があります。
   ➀ 清算型 清算型は、換価した資産の範囲内で、負債を大幅にカットして弁済し、会社を清算します。
         破産、特別清算の途です。
   ➁ 再建型 収益、又は換価した試算の範囲内で、多数決論理に基づいて、負債を大幅にカットし、事業の再建をめざす
         手法です。民事再生(再生手続)、会社更生(更正手続)がこれに当たります。再建型は、民事再生の手続
         を採るのが基本です。会社更生の途は、大規模な株式会社向けのどちらかと言えば特別な手続きです。


◆再生手続きとは?
  1.定義
    再生手続とは、無担保の一般債権について多数決に拠る権利変更と、別除権(担保権)についての手続外での取り扱いを
  混同した手続きを云います。全ての法人、自然人に適応できます。再建型法的整理の一般的な類型です。株式会社だけが
  対象になるわけではありません。
   目標となる作業は、主に弁済計画に関して定めた「再建計画案」の可決・認可と、その遂行にあります。
  債権手続きにおける債権の種類は次のように分類されています。カットの対象となるのは、再生債権のみです。共益債権
  を支払うからこそ、再建が可能になると云うわけです。
   ① 再生債権(無担保債権)
     再生手続開始前の原因に基づく財産上の債権(弁済期が基準ではなく、原因が基準になります)。
   ② 別除権(担保付債権)
     再生債権のうち、担保でカバーされている部分を云います。
   ③ 優先債権
     労働債権、租税・社会保険料債権を云います。
   ④ 共益債権
     再生手続開始後の取引に基づく債権その他、債権者の共同利益に資する債権を云います。
     通常は、申告後開始決定までの取引に基づく債権も、監視委員の承認により共益債権とされます。

  2.利用される場合の状況
    ① 貸借対照表の悪化が著しく、金融債権者、及び商取引債権者等から、多額の債権放棄等を受ける必要がある場合
    ② メインバンクその他の金融機関による「私的整理による支援」を受けることが難しい場合。このケースでは担保権の     調整等に問題があり、第二会社方式も採りにくい場合が多いようです。
    ③ 金融機関への債務の元利金支払を停止しても尚、手形決済等の商取引債権者への弁済が困難な場合


   3.更生手続との違い
      再生手続は、経営陣が経営を続投できるDIP型を原則とする手続であり、経営の連続性を維持してスピーディーな再生
   を図りやすいです。一方、更生手続は担保権者及び優先債権者を手続に取込む謂わば「重い」手続です。手続に時間を、
   要すること等から更生手続は次のような特別なケースに限られます。
     ① 旧経営陣に不正行為等の経営責任があるため、管理型手続が不適切な場合
     ② 事業継続に必要不可欠な物件に関して担保権者が反対し、差押え・競売等の担保権実行の制約が必要な場合
     ➂ 個別の弁済金額、弁済方法の交渉が難航する見込の場合
     ➃ 債務者の内部に対立があり、再建方針が固まっていない場合


    4.標準スケジュール
     東京地裁では概ね次のようなスケジュールになります。
    ➀ 申立て
    ➁ 開始決定 1週間
    ➂ 債権届出期間(終期) 1か月+1週間
    ➃ 財産評価完了 2か月
    ➄ 認否書類提出期限 2か月+1週間
    ⑥ 一般調査期間 10~11週間
    ⑦ 再生計画案提出期限 3ヶ月
    ⑧ 付議決議  3ヶ月+1週間
    ⑨ 再生計画認可決定 5ヶ月


◆財務諸表への影響
  1.B/Sへの影響
    ① 負債の部
      i ) 再建計画により再生債権(無担保一般債権)の部分を削減します
      ⅱ) 負債の部にある別除権(担保付債権)は、別除権協定等の話し合いにより解決されます。
         但し、別除権協定等の話し合いが整わない場合は、担保権実行中止命令、担保権消滅請求制度が働くことに
        なります。
    ② 資産の部
      ⅰ) 固定資産等に関して、税法上の評価減を行い、債務免除益課税への対応をします。
    ③ 純資産の部は、減資・増資の特則を除き、原則維持となります。

  
2.他の財務諸表への影響
    再生手続によるPL、CFへの影響を検討しましょう。
    
➀ P/Lへの影響
       i )  有利子負債削減によるP/Lの改善→ 損益項目として、金利を下げる程度でさほどの改善は見込めません。
       ⅱ)事業価値の毀損 → 大抵の場合、どの業種でも10~70%の売上減につながります。
       ⅲ)コスト比率 → 原価率は横ばい又は増加し、販管費率は増加します。財務リストラ等が必要です。

    
➁ C/Fへの影響
      ⅰ)弁済禁止の保全処分等により、資金流出を一時的にストップでき、資金繰りが一時的に回復します。
      ⅱ)支払サイトの短縮、仕入の現金払い等により、その後、資金繰りが一気に悪化します。
      ⅲ)DIPファイナンスを検討下さい。
      ⅳ)「資金繰り見込表」の作成、提出が必須です。裁判所、監督委員が確認します。



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民事再生は、お金が掛るよ!
このメニューの目的は、企業再生戦略において、民事再生手続は、中堅以下の中小企業にとっては、経験論としての話ですが、コストが掛りすぎ現実論として、採用し難い場合が多いです。
そこから翻って、私的整理に向かうとき、弁護士特権等の利用、支援者の詐害行為リスクの回避等のため、弁護士費用は当然に掛るものとの認識を深めて戴きたいと思います。