第二会社方式は、メガバンクの所謂「バルク処理」の局面でも使われます。
企業再生局面での
『第二会社方式』とは?

■ 第二会社方式とは?

1 第に会社方式の形態
 銀行による中小不良融資先への企業再生局面における「第二会社方式」とは、基本的には、直接放棄の代替手段として、当該不良債権先にある資産負債を、新会社に移転させることです。そして過剰債務を不採算事業や不良資産などとともに元の会社に残し、清算整理(特別清算や破産)するという手法を指します。債務者側でも例えば、実質債務超過の状況下で仮装経理などにより債務免除益対応の欠損金がない場合には、直接放棄により債務免除を受けると課税が発生します。その課税回避のため弁護士(弁護士特権を利用した厳しい手続が必須になる局面があります)の協力も得て第二会社方式を選択します。

2 課税回避の段取り
 中小企業の事業再生の局面において、直接放棄に代えて第二会社方式による実質的な債権放棄が行われる理由の一つは、債権者の課税リスクです。債権者(銀行)が、不良債権先たる債務者の融資額について、直接放棄を行った場合、寄附金課税のリスクに対応するため、法人税基本通達9-4-2の要件を満たす必要があります。それに対して第二会社方式の場合には、債権放棄は銀行融資の不良債務者の特別清算の過程で法的に切り捨てられます。そのため法人税基本通達9-6-1(2)の存在により、課税リスクが低いためです。参考のためそれらの法人税基本通達を以下のとおり紹介します。
 (1) 法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等) 
 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
 備考。合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

 (2) 法人税基本通達9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ) 
 法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。
 イ)更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
 ロ)特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
 ハ)法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額
   ⅰ)債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
   ⅱ)行政機関又は銀行その他の第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
 ニ)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済が無理と認められる場合、その債務者に対し書面により
  明らかにされた債務免除額

3.第二会社方式による事業の移転
 第二会社方式による事業の移転は、会社分割や事業譲渡の方法にるが、会社分割の方法でも税制上の非適格組織再編となる場合もある。これは、会社分割に当たり現金交付が伴わずとも、債務者会社は特別清算または破産で、清算が当初から予定されているので、税制適格の要件を満たせないためです。従って事業移転では非適格会社分割や事業譲渡に伴い、税務上の「のれん」である資産調整勘定の金額が計上され、その資産調整勘定金額の妥当性が問題です。更に通常の所得課税への移行します。これで債務者側で債務免除を受ける場合に債務免除益課税が発生しますが、対応策として、期限切れ欠損金の損金算入の規定が同時に設けられました。なお、その他、国税徴収法の第二次納税義務、登録免許税や不動産取得税(移転コスト)など、第二会社方式では税務上の問題が数多くあります。直接放棄の代替手段として第二会社方式が多用されている理由の一つが税務上の問題であることは間違い。しかし、この方法とて検討が必要な税務上の論点が数多く生じますので注意が必要です。

4.直接放棄と第二会社方式の相違点
(1)寄附全課税のリスクと第二会社方式
 中小企業の事業再生において第二会社方式が多い理由の一つとして、債権者の寄附金課税回避があります。事業再生において債権者が直接債権放棄を行うと、法人税基本通達9-4-2の「合理的な再建計画」要件が論点です。「合理的な再建計画」要件とはは事実認定の問題となるので当局との事前協議が重要です。第二会社方式では、債務者企業の清算過程で「特別清算の手続」が実施されるため、債権者側は、裁判所関与の下、法人税基本通達9-6-1(2)(当局との事前協議のこと(注1)により、その切捨金額を貸倒損失計上できます。
    (注1) 当該切捨は、協定の認可決定と実務上でも多い個別和解があります。しかし通達は協定の認可決定のみに拠っ
       ているため、当局との事前協議が必要です。
 なお、仮に破産手続による清算では、破産手続に特別清算のように債権切捨て手続がないが実務上は破産手続の進捗に伴って回収不能処理がなされます。
 ※ 法人税基本通達9-6-2(回収不能の金銭債権の貸倒れ)
   法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等らみてその全額が回収できないことが明らかになった
  場合にはその明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において当該金銭債権
  について担保物があるときはその担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。   (注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。
 
 結論として寄附金課税リスクは、金融支援も含めた企業再生計画の内容に差異はないとしても、第二会社方式のほうが想定される税務リスクは小さいと考えられます。

(2)仮装経理・債務免除益課税
 また、第二会社方式がベターなもう一つの理由として、中小企業の企業再生の現場では、多くの債務者企業が仮装経理の問題を抱えています。この実態を完全に疎明するのは非常に困難です。第二会社方式なら、実在する資産負債だけを時価で新会社に移行しますので、過去の仮装経理部分は元の債務者企業に残り、特別清算の過程で処理されるので、銀行としてはリスクが無い訳です。また減価償却資産も時価譲渡を通じて、含み損失を事実上実現でき、過去の精算が自動的に行えます。
 非適格組織再編による第二会社方式でも、直接債権放棄の場合と違い、繰越欠損金が全額切捨てとなります。これは直接放棄の場合に比べてデメリットと考えられます。しかしそのデメリットは、非適格組織再編では税務上の「のれん」たる資産調整勘定が計上され、5年間(60カ月)で償却するので、結果的にデメリットが帳消しになって行きます。

5 第二会社方式と非適格組織再編
 会社分割や合併など組織再編行為を行った場合、税務上「税制適格」の規定が問題となります。例えば会社分割では、株式保有要件や共同事業要件等を満たせば、法人税法上適格分割となり、債務者企業から移転する資産負債は簿価で、新会社(第二会社)の貸借対照表に計上されます。そのため移転に損益は発生しません。税制適格規定は、会社が組織再編を行う際に、要件を満たせば税務上の損益を発生させないとすることで、円滑な組織再編行為を可能にしたものとなっている。

 企業再生における第二会社方式では一般的には税制非適格とされる会社分割が前提です。理由は直接放棄の代替手段として第二会社方式を採用する場合には、債権者が債務者企業の清算過程で実質的に債権放棄を予定しているので、特別清算(または破産)の方法により、必ず債務者企業を清算します。従って適格要件の前提となる投資継続はありません。尤も債務者企業の清算が予定されていても共同事業要件を満たして適格組織再編となる可能性もある。しかし第二会社方式の場合には、債務者側の仮装経理等を非適格組織再編により精算できることや、新会社(第二会社)において資産調整勘定を計上しその償却メリットを享受する税務上のメリットが存在します。適格組織再編となる組織再編は決定的な判断要因になりません。

 グループ会社間での組織再編は、従前の連結納税制度下のグループ法人に加え、平成22年度税制改正でのグループ法人税制もその適用可否の検討が必要です。このグループ法人税制は、100%資本関係にある会社間の譲渡についてはその譲渡損益の強制的な繰延べが基本です。グループ法人税制では、100%資本判定の際の株式保有する個人の範囲の非常に広く、所謂「自力再生型」の第二会社方式の場合、非適格組織再編に反し、その譲渡損益が繰延べられる場合もであり得ます。自力再生型の場合は、税制適格の判定に加え、グループ法人税制の影響も事前に検討することが求められます。

6.資産調整勘定・負債調整勘定
(1)「のれん」の考え方
 「のれん」暖簾とは、会計上の入り口の話としては、時価換算での資産と負債の差額です。過去に積み上がった数字に表れない領域の信用、評価等を含め、資産の方が多ければ財産としての価値(「営業権」として時価ベースの貸借対照表上に表示します)が認識され、負債の方が多ければ、認識されません。しかしここでは、もう少し専門的な観点から話を進めます。
 債権放棄の代替としての第二会社方式では、会社分割・事業譲渡のいずれでも非適格組織再編です。債務者企業に交付した分割対価または事業譲渡対価と、移転する資産負債の時価純資産額との差額が発生します。この差額は「差額のれん」等と呼ばれ、第二会社の貸借対照表の資産の部(または負債の部)に計上されます。税務上は資産の部に計上されるのれんを「資産調整勘定」、負債の部に計上されるのれんを「負債調整勘定」と呼んでいます。なお、税務上の「のれん」評価としての資産負債調整勘定には、負債調整勘定に関しては、①差額負債調整勘定、②退職給与負債調整勘定、③短期重要負債調整勘定の3種類があります。この会計上の「のれん」は、20年以内の適正な期間で償却ることになります。

 資産調整勘定の金額の計算は、移転資産(時価純資産価額)とその対価は、等価を前提としているため、例えば分割法人等(債務者企業)の欠損金相当額が、実質的にのれん(資産調整勘定)に置き換わるような場合、つまり、負債を多く引き継いだことにより計上されるのれん部分については、税務上は「資産調整勘定」ではなく「資産等超過差額」として、その償却は認めらません。即ち妥当な金額を超える「のれん」計上は税務上、償却費を損金計上できないという訳です。この場合「のれん」が資産調整勘定か、または償却できない資産等超過差額かは「のれん」を移転する事業による見込収益の額などから評価します。第二会社に移転される事業価値の測定に基づき、その事業収益により補填されれば、その「のれん」は資産調整勘定として損金計上すると云う訳です。事業収益による補填とは、事業計画などの見込利益と「のれん」(資産調整勘定)の償却額を比較して「のれん」の償却額が過多ではないか否かと云う問題です。従って資産調整勘定の損金算入額の妥当性の検証は、所謂「事業価値」評価による「のれん」の資産性の検証が必要となります。

(2)負の暖簾(のれん)
 会社分割や事業譲渡において「負ののれん」が生じれば、譲渡される資産負債の差額(時価純資産)よりも譲渡対価(事業価値)が低いことを示します。税務上の「負ののれん」(負債調整勘定)においても同様でです。負ののれんの発生する理由は、一般的には資産負債の評価上の瑕疵や、事業価値の規模的な過小で将来的な利益を期待薄などです。しかしこうした原因から負ののれんが発生している場合は、本来の価値(時価純資産)よりも低い価格で会社分割や事業譲渡が実行されることになります。負ののれんが発生する取引が、税務上の合理性を保つには、第三者間のM&Aなど、市場取引価格である場合などに限られます。また、仮に負ののれん計上が税務上も適正であったとしても、負ののれんは5年間にわたって利益(益金)に計上されることにななります。これはキャッシュ・フローの伴わない利益に課税が発生し、企業再生計画の妥当性も問われます。
 また企業再生における第二会社方式、特に直接放棄の代替としての自力再生型の第二会社方式において、負ののれんが発生するのは「対価(又は引受債務)」が少ない銀行の過剰支援の疑義が生じます。銀行は、負ののれんが発生すなら資産負債を時価で処分したほうが回収額が多なる場合が生じるためです。このように、会社分割や事業譲渡の対価が時価純資産額を下回る場合は、債権者に対して支援の合理性を説明できないため通常、企業再生の支援は不可能という結果にたどり着きます。

5 企業価値の算定
 税務上の資産調整勘定の損金算入に際しては、移転事業の収益から合理的な企業価値を算定します。実務上は再生計画における収益の見込み額を基礎として、専門家による事業価値評価から譲渡価格が算出され、その差額として資産調整勘定の金額が算出される流れです。
 企業価値(事業価値)の計算方法は、税務上の考え方としては所謂「Discounted Cash Flow(DCF)法」等により、その企業の税務価値を合理的に見積もり、妥当な資産調整勘定の金額が算定されます。そもそも企業価値を算定していないのであれば、資産調整勘定の損金計上の判断できなません。同様に事業価値評価の上、債権放棄額の算定も基本的な問題です。第二会社方式の場合、事業価値相当額は、多くの場合、新会社から債務者企業への支払に代えて、債務者企業の借入金を新会社に引継ぎます。借入金の新会社への引継額や、債務者企業に残す金額の算定根拠にも、企業価値の計算が必要です。第二会社方式の場合、銀行(債権者)による債権放棄額は、債務者企業の特別清算手続の中で最終的な金額が確定します。例えば会社分割や事業譲渡に伴う債務者企業から事業価値に見合う借入金を引継ぐときは、その時点で引継ぐ借入金額の妥当性が問われます。この妥当性は単に返済可能性ではなく、その事業からの合理的な見込収益を基礎としてものでなければ、銀行としては債権放棄額の妥当性も疎明できません。
 このように企業再生計画上、のれんの償却額を損金計上の問題、第二会社に引継ぐ借入金額の算定、債権放棄金額等の妥当性は、企業企業価値の算定結果で担保さられいるのです。

6. 第二会社方式の法務上の問題点
 最後に付言すべき論点が一つあります。企業再生における第二会社方式の忘れやすいもう一つのキーワードは、刑法の詐害行為です。2008年頃の大会社の不良債権会社処理の時代とは大きく異なっています。銀行承諾を得る債務者の責任感と誠意が前提です。弁護士特権がないと法的措置は難しいです。なお、認定支援機関税理士でないと課税関係の把握は難しいです。

債務超過の企業にも、企業再生の途は開かれています
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